甲状腺とその病気
甲状腺はのどぼとけの下にある蝶の形をした小さな臓器で、心臓の動きや全身の血圧、脈拍や体温調節など全身の代謝を調節する甲状腺ホルモンを分泌しています。甲状腺の病気には働きがおかしくなる場合(甲状腺機能亢進症、機能低下症)と腫瘍病変の2つがあります
甲状腺機能亢進症と低下症
甲状腺の機能亢進症を起こす疾患にはバセドウ病(グレーヴス病)と亜急性甲状腺炎があります。
いずれも甲状腺ホルモンが血液中に過剰になるため、発汗過多、動悸、体重減少、血圧上昇、イライラする、手が震えるといった特徴的な症状が現れます。
亜急性甲状腺炎は風邪などのウイルス感染に引き続き発症することが多く、甲状腺の炎症であり一部の甲状腺濾胞からホルモンが漏れ出すことによって症状がおこります。
基本的には甲状腺の腫れはなく移動する痛みがあるのが特徴です。
一方バセドウ病は甲状腺を刺激する自己抗体によって起こり、この自己抗体が甲状腺を刺激するため甲状腺が柔らかく腫れることが多く、人によっては眼球の突出(バセドウ眼症)も伴うこともあります。両者を区別する方法は臨床所見と血液検査で自己抗体の有無を確認することです。
バセドウ病の場合、薬物治療で大部分が改善します。しかしバセドウ病の薬物治療ができない場合や亢進症の程度や甲状腺腫がひどかったりする場合は手術となることもあります。
甲状腺の機能低下症を起こす病気には橋本病(慢性甲状腺炎)があり、これも自己抗体が原因とされており、バセドウ病よりも硬く甲状腺が腫れる場合があります。症状としては、顔のむくみ、活動性の低下、寒さに弱くなる、髪が抜ける、脈が遅くなる、といった甲状腺ホルモン不足による症状が現れます。症状が割りと漠然としているため発見されにくい場合もあります。治療法は不足しているホルモンを薬で補います。
甲状腺腫瘍
甲状腺の腫瘍には良性と悪性があり、甲状腺の一部分が腫れてきます。悪性の場合は手術になりますが甲状腺癌の大部分は乳頭癌という組織型であり、この組織型の癌であれば手術後10年生存率80〜90%とたちのいいタイプです。良性腫瘍は基本的に経過観察を行いますが、場所や大きさによっては手術する場合もあります。
診断には超音波検査下に細い針をさして細胞を調べる吸引細胞診を行いますが、熟練した手技が必要な検査です。
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